まずは、逮捕当時の報道をご覧下さい。
母親刺した26歳長女を逮捕「不満が爆発」
警視庁石神井署は23日、殺人未遂の現行犯で、東京都練馬区大泉学園町、アルバイト渡辺梨沙容疑者(26)を逮捕した。
調べでは、渡辺容疑者は23日午前10時10分ごろ、自宅で母親(50)と口論になり、台所の包丁で母親の胸や腹、手足を刺した疑い。母親は病院に運ばれたが重傷。
渡辺容疑者は長女で、両親と3人暮らし。母親とは以前から仲が悪かったといい、調べに対し「不満が爆発した」と供述しているという。
[2007年12月23日18時49分]
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20071223-299016.html
この報道は少し間違っています。
母親と被告人の仲はそんなに悪くなかったそうです。
ちなみに、幸い母親は一命をとりとめました。
起訴状
被告人は、平成19年12月23日午前10時10分頃、練馬区大泉学園町所在の渡邊方において、渡邊リエを牛刀で殺意をもって左胸部、腹部などを刺したが、死に至らず未遂に終わったものである。
罪状認否
「間違いありません」
裁判長「弁護人のご意見は」
弁護人「被告人と同様であります。ただし、犯行時被告人は心神喪失、或いは心神耗弱状態であったものと思われます」
冒頭陳述
被告人は高校卒業後に専門学校に通って栄養士の資格を取り、病院で栄養士として働いていました。
その後、病院を辞め、本件時には派遣会社で働いていました。
幼少の頃から酒に酔った父と母が喧嘩するのを見て育ち、母親があまりやらない家事をしていました。
被告人は、被害者の怠惰な生活に腹をたてていたところ、買い物を指図されて、殺してやろうと思っていました。
一時期、1人暮らしをしましたが、すぐに実家に戻りました。
戻った後も怠惰な生活を続けていたことに苛立ちを感じていたところ、平成19年12月23日、自宅で被害者から声をかけられて、鬱陶しく感じていたところ、買い物を命じられて激高し、自分の部屋から25cmの牛刀を持ち出し、寝ている被害者を掛け布団の上から腹部、左胸部、左手首などを刺しました。
その後、被害者に灯油をかけ、チャッカマンで火を点けようとしたが、屋外に逃げられたために諦めた。
弁護人冒頭陳述
渡邊家は5人兄弟姉妹で、被告人が病気で体が優れなかった母に変わり、家事をしていました。
幼少時、父がビール瓶で母を殴り、血だらけになったのを見て育ちました。
兄妹がどんどん家を出て行くなか、長女である被告人は責任感から両親を見捨てられませんでした。
被告人は高校時、少なくともこの頃から精神病を抱えていました。
一端、1人暮らしをしていましたが、以前交際していた男性からストーカー被害にあい、実家に戻りました。
そして、結婚情報センターで知り合った男性と交際していましたが、喋ってないのに口をパクパクさせたり、誰もいないところで笑い出すなどの異常な行動を見せていました。
その後、交際相手に対し、他に付き合ってる人がいるのではないかと妄想したり、交際相手を傘で叩くというほど、精神病が進行していました。
本件当日、母親としては、被告人に刺されたのは青天の霹靂で、精神病により刺したものです。
被害者である母親は、被告人を宥恕しています。
寛大な処分を望み、温かい家庭を築いてほしいと述べています。
交際相手も、今後も交際を続けると述べています。
もうお分かりでしょうが、本件の争点は、「責任能力の有無」です。
当ブログも長い間続けてきましたが、責任能力が争点になる裁判を初めから詳しく書いたことはなかったので、ちょっと追いかけてみました。
ちなみに、被告人は拘置所において、自分の頚部をボールペンで刺しています。
弁護側は書証をいくつか提出したのですが、これがまた…、なんというか…。
その書証は、被告人が弁護人宛てに出した手紙です。
その内容は以下のようなものです。
日本人の子供を作らないようにして下さい。
自分で産めない人はどうせ死にます。
妹も子供を産みましたが、どうせ死ぬでしょう。
人間は食物を食べ荒らす。
練馬区民は特に酷い。
みな同じように裁くようにお願いします。
私の彼は我侭で、自分の感情だけで生きています。
そして変態です。
好みの女性を見ると連れ去り、色んなところで強姦しています。
強姦して、首を絞めて殺し、財布を抜き取っています。
そして、床に死体を埋めています。
これを毎日続けています。
一緒に海や川に行くと、後ろから突き落とそうとすることもありました。
彼の行ってる風俗店を取り締まって下さい。
あと、彼の持ってる裏ビデオなども取り締まってほしいです。
これらの書証は、被告人の異常性を立証するためのものです。
しかし、どうも納得がいかない。
取り締まってほしいのなら、警察に言うべきです。
留置場では、毎日警察官と顔を合わしてるはずですし。
なんで弁護人だけに、このようなことを言うのか非常に疑問です。
被害者である母親が証人に立ちました。
検事「あなたは被告人の実の母親ですね?」
被害者「そうです」
検事「12月23日、あなたが包丁で胸を刺されるということがありましたね?」
被害者「はい」
検事「この頃、3週間前から熱があって寝込んでいたんですか?」
被害者「はい」
検事「23日の朝は、午前4時頃に起きられたんですか?」
被害者「そうです」
検事「その後は、TVを観ていたんですね?」
被害者「覚えていません」
検事「朝ごはんは食べましたか?」
被害者「はい」
検事「その後、ベッドで寝てましたね?」
被害者「はい」
検事「その時、リビングのほうから被告人の笑い声が聞こえたんですね?」
被害者「はい」
検事「どんな笑い声でしたか?」
被害者「クスクスというかケラケラというか」
検事「どんなかんじですかね?」
被害者「クスクスというかケラケラというか、うまく説明できません」
検事「それに対してあなたはどうしましたか?」
被害者「どうしたの?と聞きました」
検事「それに対して被告人はなんと答えましたか?」
被害者「なんでもないと言ってました」
検事「その後、被告人があなたの部屋に来たことがありましたか?」
被害者「あります」
検事「なんの用で?」
被害者「自分の服を取りにきました」
検事「その時、会話はありましたか?」
被害者「記憶はありますが、話の内容は覚えてません」
検事「買い物を頼んだ記憶はありますか?」
被害者「あるんですけど、なにを頼んだかは覚えてません」
検事「その後、被告人は部屋を出て行ったんですか?」
被害者「はい」
検事「そしてまた被告人が部屋に入ってきたことがありますか?」
被害者「ありました」
検事「その時、あなたは何処でなにをしてましたか?」
被害者「部屋で寝てました」
検事「布団はどうしてましたか?」
被害者「かぶってました」
検事「入ってきた時の被告人の様子はどうでしたか?」
被害者「普通でした」
検事「被告人はなにか持ってましたか?」
被害者「分かりません」
検事「その後、被告人はなにかしてきましたか?」
被害者「…、いきなり包丁で刺してきました」
検事「その時、包丁は見えたんですか?」
被害者「その時は見えました」
その時は、というのも、被告人が部屋に入ってきた時は、包丁を自分の後ろに隠しながら入ってきたからです。
検事「それで、お腹に刺さったんですか?」
被害者「はい」
検事「それは分かったんですか?」
被害者「はい」
検事「どうしてですか?」
被害者「包丁に血が付いていたので」
検事「刺す時の動作はどんなかんじでした?」
被害者「覚えてないんです」
検事「その後、次々と包丁で刺してきたのは覚えてますか?」
被害者「はい」
検事「どこを刺されたかは分かりますか?」
被害者「覚えてません」
検事「記憶がハッキリしないのは、なんでだと思いますか?」
被害者「その時は無我夢中だったので」
検事「抵抗のようなことはできたんですか?」
被害者「ベッドの横にゴミ箱があったので、それで防ぐことに無我夢中でした」
検事「どのようなゴミ箱ですか?」
被害者「缶のゴミ箱です」
検事「その後1回、被告人は部屋から出て行きましたか?」
被害者「はい」
検事「その後、ストーブの灯油タンクを持って、戻ってきたんですか?」
被害者「はい」
検事「それをかけられたんですか?」
被害者「はい」
検事「灯油をかけられた後、また被告人は部屋を出て行ったんですか?」
被害者「はい」
検事「その後すぐにチャッカマンを持って、戻ってきたんですね?」
被害者「はい」
検事「被告人はそのチャッカマンでなにをしてきましたか?」
被害者「私に火を点けようとしました」
検事「あなたはそれを見て、どう思いました?」
被害者「無理心中をしようと思いました」
検事「どういう意味ですか?」
被害者「娘が犯罪者になってしまうので、無理心中をしようと思いました」
検事「実行したんですか?」
被害者「近所の人に迷惑がかかるので、やめました」
検事「心中をやめて、どうしたんですか?」
被害者「チャッカマンを奪って壊しました」
検事「それで被告人はどうしましたか?」
被害者「また部屋から出て行きました」
検事「それであなたはどうしました?」
被害者「逃げようと思って、リビングに行きました」
検事「被告人はどうしました?」
被害者「私を捕まえて、連れ戻しました」
検事「どのようにして連れ戻されたんですか?」
被害者「覚えてないです」
検事「最終的に逃げたんですよね?」
被害者「はい」
検事「どのようにして逃げたんですか?」
被害者「娘が部屋を出て行った隙に逃げました」
検事「どこから?」
被害者「ベッドの横の窓から逃げました」
検事「その後、近所の人が助けてくれて、救急車や警察を呼んだということですか?」
被害者「はい」
検事「その後、あなたは意識を失ったんですね?」
被害者「はい」
検事「あなたとご主人は、結婚してから喧嘩が絶えなかったんですか?」
被害者「主人が酒乱なもので」
検事「どのような暴力をうけたんですか?」
被害者「ビール瓶で頭を殴られたりしました」
検事「それ以外にも、箪笥を壊したりしてたんですか?」
被害者「はい」
検事「その暴力の対象はあなただけですか?」
被害者「はい」
検事「あなた自身の体調なんですけど、腎臓が悪かったり、更年期障害などで家事が出来なかったんですか?」
被害者「はい」
検事「被告人に家事を頼むことはあったんですか?」
被害者「そうですね、娘が率先してやってくれてました」
検事「率先というか、頼んだことはありませんか?」
被害者「頼んだこともありますが、率先してやってくれてました」
検事「家事をしたりすることが、被告人に負担になってたと思いますか?」
被害者「思います」
検事「それと、被告人は一時、埼玉県の川口で1人暮らしをしてたんですか?」
被害者「はい」
検事「その家賃は誰が払っていたんですか?」
被害者「娘が払ってました」
検事「今回、被告人が捕まった後、被告人から手紙がきましたか?」
被害者「きました」
検事「どのような内容でしたか?」
被害者「傷付けてしまってごめんねと謝ってきました」
検事「その他に書いてあった内容は?」
被害者「主人と仲良くやってほしいと書いてありました」
検事「今回の件で、手術は何回しましたか?」
被害者「3回です」
検事「2回目以降に気づいたことはありましたか?」
被害者「3回目の手術は医療ミスです」
検事「その手術の内容は?」
被害者「お腹の中の管を置き忘れたから、それを取り去る手術です」
とことん運がないようですね…。
検事「被告人の笑いのことについて聞きますね。このように笑うようになったのは、何時頃からですか?」
被害者「頻繁に起こり始めたのは3年前くらいです」
検事「それは大きな声ですか?」
被害者「私にも聞こえるので」
検事「あなた以外の家族も気づいていたんですかね?」
被害者「主人も少し気づいていたと思います」
検事「なにかご主人は言ってたんですか?」
被害者「いえ、なにも。ただ、なにが可笑しいんだと娘に言ってたことがあります」
検事「他の被告人の兄妹は気づいてたんですかね?」
被害者「息子は気づいていたと思います」
検事「あなたから見て、被告人の笑い以外の言動でおかしいと思った点はありますか?」
被害者「よく落ち込んでたと思います」
検事「それ以外は?」
被害者「よく分かりません」
検事「被害をうけたあなたの気持ちを述べて下さい」
被害者「謝罪もしてもらったので、もうなにも思ってません。早く社会復帰してほしいと思っています」
弁護側からの尋問です。
弁護士「梨沙さんは、お子さんの時はどのようなお子さんでしたか?」
被害者「穏やかで、大人しくて、自己犠牲の強い子でした」
弁護士「大人になっても変わりませんでしたか?」
被害者「はい」
弁護士「普段の梨沙さんは、怒りっぽいとかありますか?」
被害者「ありません」
弁護士「梨沙さんは、兄妹とは仲良くやってたんですか?」
被害者「はい」
弁護士「梨沙さんは、あなたのお手伝いを何時頃からやってたんですか?」
被害者「小学校の頃からやってました」
弁護士「あなたが厳しく命じたことがありますか?」
被害者「いえ、ありません」
弁護士「梨沙さんは、あなた方が夫婦喧嘩をしているとことを見てましたか?」
被害者「見てました」
弁護士「それを見た梨沙さんの様子は?」
被害者「怯えてました」
弁護士「梨沙さんが喧嘩を止めるようなことはありましたか?」
被害者「ありました」
弁護士「梨沙さんの学校での成績はどうでしたか?」
被害者「中の上くらいでした」
弁護士「梨沙さんは、学校で苛められてたということがありましたか?」
被害者「小学校の時に苛められてたようです」
弁護士「どうして分かったんですか?」
被害者「学校に行きたがらなかったからです」
━中略━
弁護士「梨沙さんは、自分でクスクス笑いをすることに気づいてる様子でしたか?」
被害者「いえ」
弁護士「あなたは梨沙さんを病院に連れて行ったことがあるんですよね?」
被害者「3年くらい前です」
弁護士「梨沙さんを病院に連れて行く時、クスクス笑いをするから行こうと言いましたか?」
被害者「いえ、なにも言わなかったです」
弁護士「梨沙さんが、どういう診断をうけたか知ってますか?」
被害者「分かりません」
なにも問題ないとの診断をうけたそうです。
弁護士「あなたは鬱病と診断をうけてますね?」
被害者「はい」
弁護士「家事が出来ないのも鬱病のせいですか?」
被害者「はい」
弁護士「鬱病と診断をうけたのは、何時頃ですか?」
被害者「7,8年前くらいです」
弁護士「今でも通院してるんですか?」
被害者「はい」
弁護士「梨沙さんの交際相手に、クスクス笑いの話をしたことがありますか?」
被害者「あります」
弁護士「それを聞かされた時、驚いてる様子でしたか?」
被害者「いえ、納得してました」
弁護士「あなたを刺す時の梨沙さんの表情は、どのようなものでしたか?」
被害者「無表情でした」
弁護士「裁判所に対して言いたいことがあったら言って下さい」
被害者「できれば執行猶予をお願いします」
ここで第一回公判は終了です。
次回は、交際相手と1番下の妹の証人尋問、被告人質問です。
この尋問を聞いた後、第一回公判で母親に抱いたイメージが崩れました。
あぁ、やはりこれは家庭に問題があるんだなと。
今回の記事だけを見ても、家庭に問題があると思うでしょう。
私は父親がみんなから嫌われてるものだとばかり思ってました。
ですが、現実は違うようです。
その原因の根本には父親の存在があるのですが、みんなから嫌われていたのは母親です。
それにしても、この裁判は教訓にできることがありますね。
子供に夫婦喧嘩してるところは見せてはいけないとか。
暴力をふるうような男と結婚してはいけないとか。
今回の事件で被告人だけを責めることは出来ないですね。
兄妹も、被告人を責めてはいないようでした。
いつかはこうなると、誰かが母親を刺す、又は母親が誰かを刺すと思っていたようです。
妹さんの尋問では、母親の異常性を示唆する発言があったのですが、結局はその原因の根本は夫による暴力だと思うんですがね。
父親はいまだに裁判に来てないし。
もう少し事件の根本を考えてほしいものです。
それにしても、母親の証人尋問中の被告人は顔に表情が全くなく、指を弄り続けてました。
明らかに病んでる印象があります。
とにかく、こういう事件でよくある、自分の怠惰な生活を責められて刺すというものとは根本から違う事件です。
子供の前では笑顔でいることで、明るい人間に育つものだと思います。
タグ:殺人




